ギター講座(10) オンコード、分数コードについて

分数コード

演奏している最中にD(on F#)とか、G/Cとか見たことがあると思います。コード表を見てなんとなく押さえている人も多いですが、これはオンコード、あるいは分数コードと呼ばれるもので、ちゃんと意味があるのです。

各コードのルート音

コードネーム、一番左側の大文字の部分。これをそのコードのルートと言い、その名の通り、根っこ部分を表します。コードは根っこの音を基準として上に音が重ねられているので、その根っこの音が超重要です。

コードネーム

ここで分かっておかなければならないのは、「Cコード」と「Cの音」は別物だということです。紛らわしいのでごちゃごちゃになりがちですが、CコードはCメジャーというコードネームの”メジャー”を省いたコードの名前、Cの音はドの音のことです。

ルート音で必要なのはコード名ではなく音名の方です。

音名。ドレミファはイタリア語。
音名。ドレミファはイタリア語。

ルート音だけを変える

各コードはそのコードネームにある音をルートにするのが基本ですが、ルートだけを入れ替えたい場合があります。「Dのコードではあるけど、ルート音だけをF#に変えたい」などという場合がそうで、その際に使われるコードネームがオンコード、あるいは分数コードと呼ばれるものです。

D/F#(D on F#)のからくり
D/F#(D on F#)のからくり

ちなみに、ルート音はこんな風になっています。たとえば、フィンガーピッキングの際にB7が登場すると、親指では5弦を弾きますが、これは5弦2fにBの音があるからです。

5,6弦上にあるルート音
5,6弦上にあるルート音

空白は#(シャープ)、♭(フラット)。高い方を#、低い方を♭で表します。上の例ではF#が登場していますが、Gbと言っても同じ音を表します。

エレキではこれを全部使いますが、アコギの場合は6fまで覚えておけば良いと思います。それより高いところはあまりつかいません。

オンコード、分数コードがよく使われるパターン

オンコード、分数コードが頻出するパターンとしては、以下の3種類がほとんどです。

低音部が下がり続ける(上がり続ける)

ルート音に細工をして、低音が一定のラインを作るようにアレンジされているパターン。この例は低音だけを見ていくとそのまま C→B→A→G→F→E→D と、ほとんど1オクターブ近く下がり続けます。最後はF#→Gという低音の上行を使っています。
ex1

この手のアレンジは多すぎて枚挙に暇がありません。近年のJ-POP系ではSuperflyの「愛を込めて花束を」、古くはチューリップの「青春の影」、マニアックなところではビートルズの「For No One」が分かりやすいです。

低音部が一定の音を保つ

こちらは逆に、コードは動けど低音が動かずにとどまっているパターン。
ex2
FM7のあとのG/Fがポイント。この譜例ではEm以外はルート音がFを鳴らし続けます。ミスチルの「Tomorrow Never Knows」Aメロ風です。

下のコード進行では、1,2小節目が同じルート音を使い、3小節目から動き出すパターンです。J-POPの典型パターンなので、曲は多すぎて書き切れませんが、スピッツの「ロビンソン」やユーミン「卒業写真」、カーペンターズの「I Need To Be In Love(青春の輝き)」などもこのアレンジを使っています。
ex3

G7などのかわりに

こちらはやや難しいパターン。ここで出てくるDm7/GはG7の代わりとして使われます。普通にG7を使うよりお洒落に聞こえるので、幅広く使われますが、なぜ代わりになるのかの説明は難しくなりすぎるので省きます。
ex4

右手は指弾きが効果的

この手のオンコードを使ったアレンジでは、ルート音を親指で選んで弾くフィンガー・ピッキングが圧倒的に有利。逆にストロークではほとんど変化が感じられない場合もあるので、無視して良い場合もあります。

オンコード、分数コードはからくりを覚えて自分で作れるようになるのが理想的です。

これらのコードはピアノでは非常に簡単に弾けるので、ピアノの曲をギターで弾こうとすると大量に登場することが多いです。ただし、ギターでは物理的に押さえられないようなものもありますので、無理だと思ったら諦めて分子の部分だけを弾いてください。

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