分数コード(オンコード)の役割
特にアコースティックギターでコードを追いかけると必ずと言っていいほど登場する分数コード(オンコード)。分数コードの作り方についてはこちらの記事を参照いただくとして。。
こちらの記事にも同じようなことが書いてありますが、今回はより掘り下げてみたいと思います。
役割① 下降、上昇ライン
分数コードにもっともありがちなパターン。コードの低音を意図的に下降させていくことによる、滑らかなハーモニーがこの進行の効果。G/B、Am7/G、C/Eがともに普通のG,Am7、Cだったとしたら低音は上下に大きく動くことになり、落ち着きが出ません。
この進行が使われた曲は死ぬほどあって、いちいち挙げていられないほど。G→D/F#→Emだけなど、大掛かりでないものも含めると、分数コードの8割以上はこの役割に基づくものです。ちなみにほとんどが下降で、上昇もありますが、あまり見る機会はありません。
役割② 同一音を保つ
低音が同じ音を保っているケース。この譜面はエルトン・ジョンのYour Songイントロ風の進行で、原曲はピアノで、キーもEbです。ギターでは開放弦が使えるD,A,Eのどれかを保っているケースが多々見られます。
F→G/F→Em→Am みたいな進行を含めると(ちょっと同一に語るには厳しい面もありますが)、これも結構あって、前のコードと同じルート音が続いたら注意して見てみましょう。
役割③ 7thコードの代わり
3小節目のDm7/GはG7の代わりとなるコードです。このDm7/G、そしてF/G、FM7/Gがほとんど同じ響きで同じ役割を持ちます。
このコードをGをルートとして書き直すと
G7sus4(9)
というなかなかに複雑なコード名となり、これが素のG7の代わりとして広く使われているわけです。
なぜ代わりとして使うのかというと、これが普通のセブンスコードよりもお洒落だからで、それ故にフォーク系の素朴な楽曲なんかにはあまり出てきません。
分数コードの意図を読み取ろう
このようなわけで、分数コードはわざわざ使うからにはアレンジャーや作曲者の意図が介在しているわけです。意味もないのに使おうとはなりませんからね…。演奏者はそのような意図を読み取って演奏できると良いわけで、分数コードを見たらとりあえずその前後を見るようにしてください。
前後を見ることで、その分数コードにどのような役割があるのかがはっきりしてくるので、そうすることで「この音を強調しよう」とか、演奏の指針が建てられます。
省略しても良いケース
初心者にはよくわからず、分数コードを省略して左側だけ弾いている人が結構います。意味もわからず丸暗記している人も同じぐらい多いです。
省略しても良いケースはどのような場合があるでしょうか。
・役割①の場合
・ストローク演奏の場合
この2つのケースであれば省略しても問題ないことが多いです。ストローク演奏の場合は特にC/EとCなど、ほとんど聴いた印象が変わらないものもあります。役割①の場合はコードの構成音は変化していない場合が多く(このあたり難しければ読み飛ばしてください)、省略しても響きの差は大きくなりません。
役割②、③はこのコードでなければ出ない響きになるので、省略するべきではありません。また、フィンガーピッキング演奏のときは親指でルート音を狙い撃つので、省略は論外と考えてください。(ギターで押さえられないような複雑なものはまた考える必要がありますが)
まとめ
分数コードはその曲の重要な要素となる場所に結構隠れていることが多く、軽視すべきではないです。前述のように、発見したらその前後を見て、役割を考えるようにしましょう。”コード進行”という得体のしれないものに、骨格のような意味を発見するための第一歩になると思います。